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+月灯+


〜第二章〜


フェイトが、ランプに火を燈す。
すると、ぼぉーっと、淡い光が部屋全体をを照らし始めた。
机、椅子、クローゼット・・・部屋の作りは、左右対象である以外は、ソフィアの部屋とほとんど変わらないようだ。
窓も一つ。雨が激しく打ち付け、滝のように水が流れている。雷雨は、相変わらず止む気配がない。
壁には、明かりに照らされ、大小二つの影が映っている。
ゆらゆらと揺らぐその様は、まるで、その存在がはかないものであるかのよう・・・。

「さて・・・と」

今、大きい方の影が、小さい方の影の隣に並んだ。
「しっかし、ソフィアは相変わらず雷が苦手なんだな」
ベッドの上、ソフィアの隣に座り、フェイトがからかうように声をかける。
「だって・・・怖いものは怖いんだもん・・・」
うつむいて答えるソフィア。
「なんで、みんなは怖くないの?」
そう言う間にも、ピカッと光が走り、びくっとして、身をフェイトに寄せた。
「・・・と、言うより、ソフィアが極端に怖がりなんだよ」
フェイトは、そんなソフィアの様子に苦笑しつつも、ソフィアのしたいようにさせている。
「そうなのかなぁ・・・」
「そうだよ。現に、マリアやネルさんなんかは、全然平気みたいじゃないか」
「うぅ〜・・・どうせ私は怖がりだよぅ・・・・」
しゅんっと落ち込むソフィア。
「はははは・・・」
再び苦笑いするフェイト。

カチッカチッカチッ・・・

静かになると、壁時計の時を刻む音が、妙によく聞こえる。
「フェイトは・・・」
しばらくの沈黙のあと、ソフィアがぼそっと切り出した。
「ん?」
「フェイトは怖がりな娘キライ?」
「えっ?」
「マリアさんやネルさんみたいな強い女性の方がいい?」
「い、いや・・」
「こんな風に部屋まで押しかけちゃって迷惑じゃない?」



真面目な表情で見つめるソフィア。
「う、う〜ん・・・」
フェイトは、困ったように視線を反らせた。
ぽりぽり、と頭を掻く。
「・・・迷惑ってことはないぞ?」
「ほんとに?」
上目遣いにフェイトを見るソフィア。
「うん。こうやって頼られるのは悪い気はしない」
「・・・なら良かった」
ぱあ〜と明るい表情になるソフィア。
・・・だが、

「なんてゆーの?妹に頼られる兄って感じ?」

そう何気なくソフィアに笑いかけた途端、ソフィアは急に複雑な表情になってしまった。
「そっか・・・”妹”か・・・」
「どうしたんだよ?急に」
「ううん、なんでもないよ。もう大丈夫だから、部屋にもどるね、ありがと」
「お、おい、ソフィア?」
突然立ち上がって、出ていこうとするソフィア。
フェイトが、慌てて引き留めようとしたその瞬間。

ピカピカッ!!ガラガラガラガラッ!!!!

「わっ!」
「きゃあっ!!」

ドサッ。

一際大きな雷が辺りを襲った。
同時に、フッ、とランプの火が消え、部屋は真っ暗闇になってしまった。
「・・・・・・ソフィア?」
「・・・・・・・・・・・・」
身体と身体が触れる感触。伝わる体温。
ソフィアはフェイトの腕の中にいた。
「お、おい・・・」
「お願い!離さないで!」
まるで子供のようにしがみつくソフィア。
その華奢な身体が震えている。
「大丈夫。もう大丈夫だから・・・」
フェイトはなだめるが、ソフィアはフェイトを離そうとしない。
「・・・しょうがないな」

フェイトは、しばらく考えた後、そのままソフィアとベッドに横になり、その上から布団をばさっと、かぶった。
大きめなそれは二人をすっぽりと包む込む。
フェイトとソフィア。二人分の体温が布団に伝わり、そして二人の身体を芯から暖めていく。
「ほら、大きく深呼吸をしてごらん・・・」
フェイトは、そう語りかけながら、ソフィアの身体をしっかりと抱き締める。
そして、その小さな背中を、ぽんっ・・・ぽんっ・・・と、ゆっくり叩いた。



一定のリズムで訪れるその感触は、ソフィアの恐怖心を和らげていく。

(・・・あったかくて・・・・・・落ち着く・・・・・・)

ソフィアの震えは、いつしか止まっていた。



カチッカチッカチッカチッ・・・

どれくらいの時間が経っただろうか?いや、実際には、数分しか経っていないのだろう。
だが、その時間はとても長いものに感じられた。
そう、まるで永遠に続くかのように・・・それは、とても、とても、心地の良い時間・・・。

「大丈夫か?ソフィア」
吐息がかかるくらい、近い所からフェイトが優しく声をかける。
目が慣れてきたためか、今は、何となくお互いがわかる。
「うん、もう大丈夫。だけど・・・」
「だけど?」
「もうちょっとこのままいたいな・・・」
ぎゅっと、フェイトの胸に顔を埋める。
とくんっ、とくんっ、と、フェイトの鼓動の音がよく聞こえる。
「そうだな・・・じゃあ、もうちょっとこのままでいようか」
「うんっ、ありがとう・・・・・・」

カチッカチッカチッカチッ・・・

「ねぇ、フェイト」
今度はソフィアが話しかける。
「うん?」
「昔、わたしたちが小さい頃にもこんなことあったよね、覚えてる?」
「そうだっけ?」
「うん・・・あの時も、フェイトはこうして一緒に寝てくれたんだよ」
「あ〜、そういえばそんなこともあったかも・・・しかし、よくそんなこと覚えてるな」
「覚えてるよ・・・だって、凄く嬉しかったから・・・」
「そんな大袈裟な」
照れたように笑うフェイト。
「ううん、大袈裟じゃないよ。フェイトは、わたしが本当に困っている時は、いつだって助けてくれた・・・もちろん、この前だって・・・」
そこで、ふっと声が止まる。
そして、もぞもぞっと布団の上に顔を出した。
「ねぇ、フェイト。フェイトは、どうしていつも私を助けてくれるの?」
まっすぐにフェイトを見つめるソフィア。
「”妹”だから?」
「・・・・・・・・・」
「もちろん、私だって、フェイトのこと、”お兄ちゃん”みたいに思ってる部分もあるよ・・・」
目を伏せ、フェイトの服をぎゅっと強く握り締める。
「だけど・・・だけど、それ以上に私は”フェイト”が好き。”お兄ちゃん”じゃなくて、”フェイト”が・・・この気持ちは、絶対に作り物なんかじゃない!」
「ソフィア・・・・・・」
「フェイトは、わたしのことどう思ってるの?」
「・・・・・・・・・」
フェイトは、ソフィアの視線を受け止めるように、無言のまま目をつむった。
数秒間の沈黙。
そして、ゆっくりと目を開いた。

「・・・・・・目をつむってごらん」
「え?」
「・・・いいから」
「う、うん・・・」
言われた通りに、瞳を閉じるソフィア。
すっ、と頬に触れる、手の温もり。

「・・・これが、僕の答えだよ」

そう言うフェイトの吐息が間近に感じられ・・・・・・

「ん・・・・・・・」

唇に柔らかい感触が重なった。

暖かくて、気持ち良くて・・・とろけてしまいそうな・・・・・・
それは、とてもとても、優しいキス。


<次回予告>

「これは、現実だよね?私の気持ち・・・フェイトの気持ち・・・これは嘘じゃないよね?」
「・・・・・・試してみようか?」
「え?」

※第三章からは、裏サイトでご覧ください