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+トリプルアクセル+


降りしきる雪。ここはギヴァウェイ。

クロードとプリシスがかくれんぼに興じている頃、残りのメンバーはノエル博士の家を訪ねていた。
台所では、そのノエルと彼の教え子だったケルメがお茶の支度に忙しそうに立ち回っている。
シュンシュンと火にかけているポットから大量の湯気が噴出している。

「この寒いのに何やってるのかしらね」
「この寒いのに何やってるんだか」

絶妙のタイミングで同じ事を口走ったレナとレオンは、思わず顔を見合わせた。
その様子にセリーヌは、堪えきれずにププッとふきだした。
「嫌ですわ二人とも。クロード達だけでかくれんぼしているのが、そんなに面白くないんですの?」
「だ、だってさあ……」
今度口を開いたのはレオンだけだった。
レナは沈黙したまま頬杖をついて窓の外を眺めている。
「大体緊張感が無さ過ぎだよ。それに大学の図書館で調べ物したいって言い出したのはクロード兄ちゃんじゃないか」
「まあ…それはそうですけれど……」
(かくれんぼなんて子供っぽいことして一体何が楽しいのさ……)
レオンの不機嫌は納まらない。レナは物思いにふけるばかり。
セリーヌは苦笑するばかりだ。
そんなメンバーの元に、宇宙一不幸な男が遅れてやってきた。
「くうー寒かったぁ。本当にすごい雪だね、ここって」
「あらアシュトン。どこで寄り道していたんですの?」
「寄り道ってゆうか、ちょっと星占いをしてもらっていたんだけど…その結果がまた酷いんだよ。とほほ……」
「ん〜。それでこそアシュトン、ですわ」

ガーン。

どっかの白ネコみたいに口をあんぐり開けた顔を惜しげもなくさらすアシュトンに、ふとレオンが何か企むような笑みを浮かべる。
「処で…プリシスはどうしたんだい?」
黒いマントに残る雪を払い落としながら、アシュトンはキョロキョロと辺りを見まわす。
(あー。コイツもかい…)
セリーヌは頭痛の種が増えた事に密かに落胆した。
しかしその件に関しては他の誰も回答を提示するはずもない。
「プリシスは、クロードとかくれんぼの真っ最中ですわ……」
「ク、クロードと…」
そのとたん。アシュトンの体は足元からピキピキと音を立てて凍り始めてしまった…。
「きゃあー!?ア、アシュトンー」
レナが叫ぶ。
「??レオンまさかディープフリーズ掛けたんじゃ…」
セリーヌがレオンをにらむ。
「ひ、酷いやっ!僕まだ何もしちゃいないよぅ〜」
日頃何かとアシュトンをいじめているレオンは、こんな時真っ先に疑われてしまう(笑)。
そして何やら騒々しいなと様子を伺いにきたノエルは、のほほーんと、こう呟いた。
「おやぁ?これは見事な氷像ですねえ」
違うちゅーねん。



クロードは気が気では無かった。
プリシスとのかくれんぼは二回戦目に突入し、今回は自分が追われる立場となっていた。
このかくれんぼ、実は三本勝負であり、二本先取した方が勝ちなのだ。
しかーし。
追われる側は一時間逃げ切らなければならない。
一本目、たった十四分であっさりプリシスを発見し勝利を修めたクロードだったが……。

(凍死しそうだよ……)

降りしきる雪。
何故ならここはギヴァウェイ。寒い。寒すぎる。
だが。
時計を見る。タイムアップまであと二十三分ほど。
ここまできたら負けたくない。
そうだ思い出せ。あの時の悔しさを。ディアスとの武具大会を思い出すんだクロード!
「負けられないんだああああ!」

〜はにゃーん?どっちがレアボイスだったっけ〜???

などと意味不明なオラクルが脳裏を過る。
クロードは我にかえった。
…居る。感じる。背後に誰かの視線が痛いほどに。
(くっ、見つかったか……)
そう。それはまるで背後から何か突き刺さるような…いや、むしろ痺れるような…?
痺れるって…まさかプラズマびりびり…
「っておい!プリシ…」
「わわっ!やっと気が付きましたね?クロード君♪」
「………じゃないし」
がくっ。
ブラックアウト寸前のクロードが振り返り目にしたのは、赤い彗星ーじゃなくって赤い熱血記者、チサトだった。
その手にはしっかとスタンガンが握られている。
「なっなっ、何するんですか貴方って人は」
「あら。だってこんなところでピクリとも動かずにしゃがんでいたから凍死寸前かと思って…つい」
つい、でこれかい。そんな気付け薬欲しくない。
「えーと?気を取りなおして…こんなところで何してるんです?」
「何って、見れば…」
「わかりません」
チサト即答。
「…ですね。ですよね」
クロードは溜息をついた。凍死しかかった上に電撃あびせられて。
「今プリシスとかくれんぼの真っ最中なんですよ。…チサトさんはどうしてここに?」
「私は取材活動中」
チサトどきっぱり。
「…すみません。今の発言はオフレコにしてください…」
「むー。スクープだと思ったんですけどねえ…「光の勇者、決戦前の優雅な休日」とか」
「…………」
これのどのへんが優雅なんですか〜い……(涙)



待てど戻らないクロード達にしびれをきらした一行は、気分転換にファンシティに向かう事にした。
こっちも楽しんじゃおう!とゆーわけだ。
しかし。
「そんなわけで、やってきましたファンシティ〜!!!」
などと一人テンション高めなアシュトンをよそに、他のメンバーはどうにも冴えない様子だった。
この世界唯一の娯楽スポットに来てみたものの、最早全てのアトラクションは体験済みだ。
「……これからどうするのさ」
レオンが呟く。
「そうですわね。闘技場は大分前に出入り禁止になりましたし……」
と、セリーヌ。
「同人誌会場は……イベントないんですよね、この時期は」
なぜ知っている、ノエル博士。
「クッキングマスターは……」
と言いかけたレナだが、自分以外に出たがる人物がいるはずもなかった。
「ん〜、僕は占いの館に行きたいかなあ〜」
アシュトンはそれだけが楽しみと言わんばかりに建物の方角を指差していた。だが、
「どうせ大凶・最悪・諦めましょう、としか結果は出ませんわ」
「酷い……酷すぎるよセリーヌさん……」
「私も今日は占いしたい気分じゃないなあ……」
「となると残るのは……」

「バーニイレース……」


ところがレース会場入口には、レース中止を告げる看板が掲げられていた。
「申し訳ありません。昨夜遅くに全てのバーニィが脱走してしまいまして……」
「だ、脱走……」
「ええ。バーニィルームに書き置きが残っておりましてね……」
「それは興味深いですね。私にも拝見させていただけませんか?」
忘れそうになりがちだが、ノエルは動物学者さんだったりする。
問題の書き置き?にはバーニィの手形が無数に押されていた。
「こ、これは……」
飼育担当者の話によると、この手形が一つだと「ご機嫌」二つだと「まあまあ」三つだと「いまいち」と判断されるらしい。
これが無数となると……
「うーん……相当ストレスが溜まってたみたいですね」
「…………」
もっと凄い解釈を期待してしまったのですが、こんなものでしょうねえ。
「となると当分レースは中止ですね。大変だなあ」
「仕方ないですわね……。さて私達もこれからどうします?」
「置いてきた二人も気がかりだし、もう戻ろうか?」
「そうですねえ……」
骨折り損となって心なしか落胆する仲間をよそに、ふとレオンが呟いた。
「ねえ、係員さん。今日だけココの中使っちゃだめかなあ?」
「レース場をですか?……まあ、構いませんが」


無人のレース会場内は、思いの他広く目に映った。
「ここでバーニィたちは競走してるんだよな〜」
バーニィにでもなったつもりなのか、アシュトンとノエルはフィールドに降りて、なんとなしに走り出した。
サクサクと人工芝を踏みつける音が、どこか遠慮がちに響き渡る。
そんな二人を見下ろしながら、レオンは満足げに微笑んでいる。
レナとセリーヌは、その笑顔の理由が判らず顔を見合わせるばかり。
「ねえレオン、ここで何をするつもりなの?」
「うん、まあ見ててよ……二人ともそろそろ戻って来てよ〜」
呼びかけに応じてアシュトンが戻ってきた。
ノエルは脱走したバーニィの追跡を手伝う事にしてその場を去っていった。
「うーんと、実はギョロにも手伝って欲しいんだ。いいかな?」
と、何やらギョロに耳打ちをしたあとで
「じゃあ、頼むからね♪」
「ギャフギャフ」
「行くよ〜!ディープフリーズ!!」
「ギャフフー!!」
「!!?」
どうゆうこと?
……ただ唖然とするばかりのレナとセリーヌだったが、ほどなくしてレオンの意図するところが見えてきた。
「そうか、スケート場にしちゃうのね?」
「そーゆー事!僕、一度やってみたかったんだ♪」
やがてフィールドは見事氷床と化した。
そしてレナがプレスを駆使することにより氷床は整い、立派なスケートリンクが出来あがった。



「ほえほえ〜」
クロード探しに疲れ果てたプリシスは、勝ちを諦めノエルの家を訪ねることにした。
少しばかり暖をとり、タイムアップの頃を見計らってスタート地点に戻ってみるつもりだった。
ところが留守宅を預かるケルメから他の仲間がファンシティに向かったことを知り……。
「もぉ〜、クロードったら何処に隠れたのかなあ〜」
規定の時刻はとうに過ぎてしまったので、スタート地点の街の中央広場へととにかく向かうことにした。
しかし広場に辿りついたものの、クロードの姿は見当たらなかった。
仕方なくプリシスは、爆発規模をミニマムに改良した「クリアボム・プリシスVer」を空に放った。
クロードがその合図に気付く事を祈りつつ。
ボムは乾いた音と共にピンク色の火花を散らしながら炸裂した。
グレイにけむる雪空に色が散って通行人も何事かと空を仰いだ。
ほどなくしてクロードがチサトと共に現れた。
その様子にプリシスが思いきり腹を立てる。
「酷いよクロードぉ〜!こっちは必死で探してたのに〜!」
「え?でもかくれんぼなんだから、普通逃げるだろ??」
「そうじゃなくて、どうしてチサトさんと一緒なわけ?二人でずーっとどっか行ってたんじゃないの??」
「わっ、それは誤解だよ。たまたまチサトさんが……」
「はーい私はお仕事ですから♪ところで、二人とも笑って笑って〜」
「…………」
言い争いの種が自分だってこと、気付かないし……などと思いつつ、カメラを向けられた二人はしばし営業スマイルを決めこんだ。
「はーい、良い絵が取れました〜♪」
「……って。こんな事してる場合じゃないんだった!クロード!」
「こ、今度は何さ?」
「私達置き去りにされちゃったよぅ〜」
「置き去りって」
プリシスはようやくクロードに他の仲間がファンシティに行ってしまった事を告げた。
「そうか、それじゃあ僕達も追いかけよう」
「アシがないんだよう」
「アシ?」
「行きたくてもサイナードがいないんだよ。どうしよう〜」
なるほど、とクロードは両手をポンと叩いた。
(となると……待つしかないか……)
途方に暮れるクロードを、何処か楽しそうにチサトが覗き込む。
いや、この人は常に楽しそうだ。気のせいだろうか。
「ふっふっふ」
「?どうかしましたか、チサトさん?」
「どうやら移動手段がなくてお困りのようですね?」
「ええ。その通りですよ」
「でしたら私にお任せアレ。取材用のサイナードがありますから!」
「おおっ、その手があったか!よし、それじゃ早速お願いしますよチサトさん!」
「了解しました♪」
(よーし取材続行中……っと)
メールで業務報告を済ませ、チサトは上機嫌だった。
プリシスはファンシティでクロードに好物のクレープをおごらせようと頭の中でイメージトレーニング中。
そしてクロードは
(うーん……やっぱりまずかった…かなあ)
待たせたとはいえ、結果置いてけぼりを食らったことに、少しばかり落胆していた。
一瞬怒ってそっぽをむいたレナの横顔が浮かんで消えた。
溜息がこぼれた。



ようやく辿りついたファンシティは、どこか以前と違う雰囲気だった。
入場ゲートには、”スケート場オープン”と書かれた横断幕が貼られていた。
「これって……」
「いつのまに?」
「すみません、ネーデ新聞ですけど〜!」
チサトは当然の如くインフォメーションの係員に突撃取材を敢行。
本当に仕事熱心な女性だ。
その隙にクロードとプリシスは、逃げるように園内に駆け込んで行く。

スケートリンクと化した元バーニィレース会場は、混雑を極めていた。
ただレースの時の熱狂ぶりとは違い、集まった人々は総じてホワンとしているとゆうか、ただうっとりとそれを楽しんでいた。
そんな人々の視線の先には……

「レナ?それにレオンも……」

人々は皆、二人のスケーティングに酔いしれていたのだった。
それを暫く眺めていたクロードとプリシスだったが……。
「……なにか、おかしいような…」
「てゆうか……服装が」
「どうです?すごい人気ぶりでしょう?」
呆然とする二人に声をかけてきたのはセリーヌだった。
アシュトンもプリシスに気付き、すぐに駆けてきた。
「セリーヌさん、これは一体?」
セリーヌとアシュトンは、交互に経緯を語り出した。
バーニィが脱走中だとゆうこと、レオンがスケートをやりたいと思いついたこと、それから……
「……でね、そのうち滑ってる所を見物にくる人がどんどん増えちゃって、こうなってるんですの」
と、一瞬耳をつんざくほどの歓声が沸きあがり、いろんな角度から光の点滅が起こった。
それはカメラのフラッシュだった。
氷上では色鮮やかな短めのワンピースを纏ったレオンが、宙高く舞い見事なトリプルアクセルを決めた瞬間でもあった。(だったかな?:謎爆)
「あわわわわっ」
クロードは思わず自分の目を両手で覆った。
「あら、大丈夫ですわ。絶対転んだりしない、紋章術を施してあるキャミソールですから♪」
「レオンのあの衣装……セリーヌさんの服ですか」
なるほど、とクロードは合点した。
大きく開いた胸元といい背中といい、露出度高めなこの上なく派手な服だった。
ちなみにレナはタキシードを着用していた。
こうして遠目からみてみると、背の高いレナの方が男、そしてレオンは女の子だと誰もが思うに違いなかった。
実際こうして華奢な手足でまさに踊るように滑るレオンを目で追いかけているうち、クロードは妙な気分になっていた。
むしろ普通の女の子よりも、ずっとかわいいかもしれない……
「クロード、顔赤くなってますわよ?」
「ええっ?いや、その〜」
参ったなあ〜などと口ごもるクロードにセリーヌは苦笑する。
そしてボソっと呟いた。
「襲っちゃダメですからね?」

「ななな何言ってるんですか!」

何事かと周囲の視線が集中する。
自分でも驚くような大声を上げてしまい、クロードはますます頬を染めた。
「ちょ、ちょっとクロード……」
「す、すみませんすみませんセリーヌさん……」

そんな騒ぎが氷上にまで聞こえていたのか、見物人に混じっていたクロードにレナが気付いた。
「クロード!」
「え、あ、ホントだ!クロードお兄ちゃんだ!!」
リンクから名前を叫ばれて、クロードは困ったような笑顔で二人に小さく手を振った。
レナも照れながら手を振り返した。
レオンはというと、まるで何もかも捨て去るような勢いで急いでリンクから上がり、満面の笑顔を浮かべてクロードに駆け寄り飛びついてきた。
「クロードお兄ちゃん、待ってたよー!!」
「おい、こらレオンったら」
ぎゅっとしがみついたまま離れようとしないレオンを、クロードは仕方なく抱きかかえた。
「しっかし…何て格好しているんだい?風邪ひくだろう?」
「え、あ……うん」
するとクロードは抱えてたレオンを下ろして、自分のジャケットをそっとレオンの肩に掛けてやった。
「ありがとう、お兄ちゃん♪」
「いや……」
実は目のやり場に困ったのかもしれない。
「最初は……」
「うん?」
「最初は僕もこんなの着るのイヤだったんだけど……セリーヌさんがコレ着たら絶対転ばないからって……」
「うん、そうなんだってな」
「そしたら……レナお姉ちゃんがカワイイからこのまま着ていなさいって……」
「…………」
レナもかい。
「ふふ〜、クロードだってそう思ったのよね?」
「わっわわわっ!セリーヌさん、何時の間に?」
「……さっきから居ましてよ?いやですわ、二人の世界作っちゃって〜」
ふ、二人の世界って……。
クロードは動揺した。
「それで?実際どうなの?」
「は、はい?」
「だ・か・ら!本音じゃレオンの姿、かわいいって思ったんでしょ?」
「うっ」
「……ボクも感想聞きたいな」
「えっっ」
すると上目遣いのレオンがはにかんだような瞳でクロードを見つめていた。
そんな格好で、そんな目で見られると、ますますおかしな気分になってしまう。
「……何やってるの?」
言葉もなく見つめあうばかりのクロードとレオンを怪訝そうに伺いながら、自分の服に着替えたレナが戻ってきた。
「ねえクロード、レオンの格好かわいいよね♪」
「え?いや…?」
「えー絶対かわいいよね?ね、セリーヌさん?」
「勿論ですわ♪」
「あ、うん、そうだね。かわいいよ、うん」
「もー、今の返事の仕方、いい加減な感じだなあ」
レナはからかうようにクロードに肘鉄をお見舞する。
「う、それじゃあ……えーと」
クロードは改めて、レオンの頭にポンっと手を乗せて
「かわいいけど、僕はやっぱり普段のレオンの格好の方がいいかな」
するとレオンは
「うん♪じゃあボクも着替えてくるね♪」
そう言ってニッコリ笑って、あっさりと着替えに言ってしまった。
妙な妄想などせずに、さっさとかわいいと言ってあげれば良かっただけなのだ。
クロードは、動揺していた自分に苦笑した。
「なんかレオン嬉しそうね」
「そうなのかな?」
そしてレオンの後姿がロッカールームへと消えてゆくのをぼんやりと眺めながら
思い出したかのようにレナが呟いた。
「……クロード」
「はい?」
「レオンに妙な事しちゃだめよ?」
「ぐ……ぐはっ」

レナは思った。プリシスよりもレオンの方がライバルなのかもしれない……。