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+レオンの不幸な一日+


〜第一章〜


「まったく・・・こんな所のどこが楽しいんだよ・・・」

通り沿いの白いベンチに一人座って、少年はつぶやいた。

”こんな所”とは、ネーデ唯一の娯楽都市、ファンシティのことである。
光りの勇者様一行は、リーダーである光りの勇者様ことクロード曰く、
「十賢者と戦うための修業と、アイテム入手のため」
と称して、この街を訪れていた。
そして、入って十分も経つと、皆、十賢者のことなど頭からきれいさっぱり消えてしまっていた。
結局、皆遊びたかっただけなのである。

・・・約一名を除いては。

レオンは、気がつくといつの間にか一人ぼっちになっていた。
クロードとディアスは格闘技場へ。
レナとアシュトンは料理コンテストへ。
セリーヌとプリシスは占いの館へ、ボーマンとノエルはバーニィレースへ。
エルネストとオペラに至っては、真っ昼間から酒場へ、それぞれ行きたい所に行ってしまった。
レオンだけが、特に行きたい所もなく、暇を持て余しているのた。

「あれ?ボクどうしたの?」
突然声をかけられた。
見上げると、人の良さそうなお兄さんが立っていた。
服装を見ると、胸に可愛いバーニィを模ったロゴが入っている。
どうやら、ここファンシティのスタッフのようだ。
(どうしたの?って、見てわかんないの?退屈なんだよ!それに、”ボク”ってなんだ”ボク”って!子供扱いするな!!)
つい八つ当たりをしそうになったが、何とか堪える。
「いえ、なんでもな・・・」
「あ、もしかして迷子?だったらインフォメーションセンターに・・・」

カキーン。

レオンは、八つ当たった。
「はあ・・・そろそろプリシス達は終わる頃かな?行ってみるか・・・」
レオンは、”あまり気乗りはしないけど”という感じで、とぼとぼと歩いて行った。

笑顔のまま氷の彫刻と化したお兄さんを残して・・・。


人、ヒト、ひと・・・どこを見渡しても人ばかり。
人工密度は、四人毎平方メートルくらいだろうか?
変な格好をしている人もかなりいる。
青い髪、手づくりと思われる鎧に身を包んだ剣士の出で立ちの人。
尻尾がついている。
黒い髪の毛を、半分金色に染め、片手に長い爪を装着した、目付きの悪い男の人。
何故か腹を出している。
水着を着た、ピンク色の髪のポニーテールの女の子。
よく見ると、猫耳が付いてる。

「まだまだだね、あんな猫耳・・・じゃなくて!ここはどこ!?」

実体験としての記憶にも、今まで読んだ数多くの本の中にも、今見ているような光景は無かった。
何故皆あのような格好をしているのかわからない。論理的な説明がつかない。
訳もわからず、ウロウロしていると、
「きゃ〜!かわい〜ぃ♪♪」
という声とともに、やはり変な格好をした数人のお姉さんが、寄って来た。
気がついた時には既に取り囲まれていた。
「ねえねえ、ボク、この耳どうやって作ったの?」
「何のコスプレ?誰にしてもらったの?」
「可愛い〜ぃ♪♪」
(な、なに?なんなのさ?こすぷれってなに??)
レオンは、きょとんとしたが、お姉さん達はお構いない様子。
「ほんとによくできてるよね、この猫耳・・ね、触っていい?」
「えっ?わっ?!」
”嫌だよっ!”と言う前に触られていた。
「やぁ〜ん!ふさふさぁ〜!!」
「あ!ずるい!私にも触らせてよ!」

ぐいっ。

「いたたたっ!痛いよっ!」
慌ててお姉さん達の手を振り払い、耳を押さえる。痛さで少し涙目になる。
「え?痛い?どういうこと?」
「そんなわけないでしょ?そんなこと言わないで、触らせてよぅ〜」
一旦手を止めたお姉さん達だったが、再びレオンの耳を、さらには身体中をべたべたと触り始めた。
「だ、だれか、助けてーーー!!」
レオンは必死に叫んだ。
すると、
「あれ?レオン!?」
どこかから、自分を呼ぶ声がした。
声がした方向を見ると、一際存在感のあるポニーテールの少女、プリシスが人込みの中立っていた。
「あんた、こんな所でなにしてんの!?」
「何してんのって言われても・・わあっ!どこ触って!?・・・と、とにかく助けて・・・」
お姉さん達に、もみくちゃもにされて、もはや半泣き状態で訴える。
「よくわかんないけど・・・あとでクレープおごりだかんね♪」
そう言うと、プリシスはレオンの腕をつかむと、一気に走り出した。
それに連られて、レオンも半分引きずられるような形で翔け出す。
「あぁん!待ってえ〜!」
後ろでは、まだ欲求不満といった顔のお姉さん達が、名残惜しそうに見送っていた。


・・・数分後、二人はファンシティの中央広場までやってきていた。
ここでは、毎日様々なイベントが模様されるのだが、まだこの時間帯は何もやっていないようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「はぁ、ふぅ・・・あんた、なんで同人誌即売所なんかにいたの?」
レオンより早く呼吸を整えたプリシスが、レオンに当然の質問をした。
「はぁ、はぁ・・・ボクは、ただプリシス達の様子を見に行っただけだよ!そしたら、何故かあんな所に・・・」
やっと呼吸を整えたレオンが、抗議まじりに答える。
「あぁ、それでかぁ〜!」
プリシスは、ぽんっと、手の平をもう片方の手をグーにして叩いた。
「アンタ、階を一つ間違えたんだよ」
そう言うと、プリシスは側にあった園内マップを指さした。
そこには、占いの館の位置と、その下にしっかり『同人誌即売所』と書かれていた。
「あ・・・」
「アンタ、バカだね〜よりによって同人誌即売所なんかに行くなんてさ」
そう言うプリシスは、笑いを堪えているようだった。
「行きたくて行ったわけじゃないよ!それに、同人誌即売所って、ただ単に、自費出版の本を売る所だろ?なんだってあんな変な格好した人ばっかりいるんだよ!」
「え?そ、そりゃあ・・・ねえ?」
意表を突かれたのか、何でもはっきり言うプリシスにしては珍しく口ごもる。そして、
「・・・まあ、まだ、レオンは知らなくて良いんだよ♪」
なでなで〜♪とレオンの頭の上を撫でた。
「バカにするなぁ!」
ぶんっ!と、レオンは腕を振り上げたがプリシスには、ひらり、とあっさりとかわされた。
「もういいよ!ボクはクロード達の所に行くから!はい!これ、クレープ代!!」
乱暴に100フォルを押し付けると、闘技場に向かって、ずんずん、と歩いて――本人は大股のつもりで――行ってしまった。

一人残されたプリシスは、しばらく白衣の後ろ姿を見ていたが、ふと、一人つぶやいた。
「良かった・・・なんでアタシがあそこにいたか聞かれなくて・・・」
おもむろに、背負ったリュックを下ろし、ごそごそと中から何かを取り出す。
それは、縦30cm、横20cmほどの、薄目の本だった。
「だって、ねえ・・・」
その本の表紙には、見つめ合うクロードとレオンが描かれており、
タイトルには、『光の勇者と猫耳白衣の熱い一夜』と書かれていた。
「・・・クレープ食べにいこ♪」
プリシスは、本をリュックにしまうと、何事もなかったかのように、スキップで、クレープ屋台へと向かうのだった。