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+レオンの不幸な一日+


〜第二章〜


「ママー!こんどあそこ行こ〜♪」
「はいはい、そんなにはしゃぐと、転びますよ」
と、幸せそうな親子。
「ミッチー♪えいっ♪」
「きゃん♪もう、よしりんたらバカなんだから♪」
これは若い(バ)カップル。
街全体から聞こえる陽気な声。
それを包む柔らかな日差し。
そんな情景を尻めに、「ていっ!」と、不機嫌そうに小石を蹴飛ばしている少年がいた。

「まったく、何だって言うんだよ・・・」
プリシスと別れたレオンは、まだぶつぶつ言いながら歩いていた。
自分の知らないことを、他人が知っている。その事自体がレオンにとっては面白く無い。
ましてや、その事で子供扱いされたとあっては、尚更である。
そもそも、何故プリシスはあの場にいたのか?あそこで何をしていたのか?
今になって、色々な疑問が浮かんでくる。
(もっと早く気づけば反論してやったのに!!)
レオンは悔やんだが今となっては後の祭りである。

・・・もっとも、知らないほうがレオンにとって幸せかもしれないが。


レオンは、てくてくと歩きながら、改めて街の様子を見渡してみる。
まったくもって、奇妙な街である。
闘技場はともかく、先ほどの同人誌即売所やらバーニィレース、その他諸々の娯楽施設などは、必要性が全く感じられない。
こんなものばかり作って、この星の人間は、本当に十賢者と戦う気があるのだろうかと疑ってしまう。
(まあ、それはここで遊んでる誰かさん達も同じだけどね・・・)
いくつかの顔が思い浮かび、そして、それにぶつけるかのように小石をおもっいっきり蹴り飛ばした。
(たぶん、変な街だから、変な人ばかり集まるんだ。)
レオンは、そう結論づけた。

と、向こうの方からなにやら叫びながら猛スピードで走ってくる人がいる。
これまた、相当変な人だ。
ピンク色の変な帽子に、変なワッカ。
妙に露出度が高い服。肌には変な文字、紋章みたいな・・・
「・・・って、セリーヌ!!?」
レオンは、思わず大きな声を上げてしまった。
「きゃあ〜〜!!誰か助けて下さいまし〜〜〜!!」
叫びながらこちらに走ってきたのは、なんとセリーヌだった。
そして、その後ろからは、ドドドドドッという音と共に、大勢の人間が、土煙を上げて突進してきている。
どうやら、セリーヌを追い掛けているようだ。
(一体何をやらかしたんだ・・・?)
物陰に身を隠し様子を伺う。

何かイザコザが起きた時、たいていの場合、悪いのはセリーヌである。
と、レオンは思っている。
セリーヌの日ごろが日ごろだからである。
あのスタイルにあの格好。異性に寄ってきてくれと言っているようなものだ。
それでいて、プライドは高いので、えり好みしてフッてばかりいる。
その時の言動も容赦が無いので、当然問題が起きる。
(そんなことばかりしてるから、いつまで経っても結婚できないんだよ!)
レオンは声には出さないが、心の中でそう思っている。

だが、今回はどうも様子がおかしい。
追い掛けているのが、若い男性ならともかく、若い女性や中には子供や老人までいるのだ。
「僕と付き合って下さい!」
「いや、俺と!!」
「待ってお姉様ぁん♪アタシを、す・き・に・し・て♪」
「ボクも〜!」
「ワシもじゃ!」
などの声が聞こえる。
「いやあ〜!ワタクシ、そういう変な趣味はありませんのよ〜!!」
と、セリーヌの悲鳴。
いつもは、問題が起これば紋章術一発で片をつけてしまうセリーヌだが、さすがに人が多すぎるため、詠唱する間もなく、逃げることで精一杯のようだ。
それに、紋章術を使えたところで、(たぶん)無実の女子供にまで使うわけにはいかないだろう。
(・・・どうしよう。これは助けるべきなのかな・・・)
レオンが迷っている間にも、セリーヌと土煙は近づいてくる。
(どうする?助けるか?)
「いやぁ〜!!」
ドドドドド・・・
(でも、なんか恐いし・・)
「助けてくださいまし〜!!」
ドドドドドド・・!
(セリーヌには、何かといじめられてるし・・・)
ドドドドドドド!!!
(助ける義理もないかなぁ・・)
ドドドドドド・・ドサッ。
「あ」
レオンが考えているうちにセリーヌはレオンの前まで来てしまい・・・そしてコケた。
その拍子に、何かが転がり落ちる。
セリーヌはそれに構わず、すぐに立ち上がって逃げて行ったが、転んだロスは大きく、しばらくして捕まってしまった。
「やっと捕まえましたわ♪お姉さまぁ♪」
「さあ、僕と熱い一時を!」
「きゃー!どこ触っていらっしゃるの!何故ぬがしますの!?」
何やら凄いことになっている。
その様子を少し離れたところから眺めていたレオンだったが、
「・・・君子危うきに近寄らず、と言うしね・・・」
ぼそっとつぶやくと、くるりと”回れ右”をする。
そして、そのままセリーヌが走りぬけた道を引き返し始めた。
「ありがとう、セリーヌ、そしてさようなら」
レオンは、セリーヌを見捨てることに決定した。

「何だろうこれ?」
少し歩いたところで、レオンは何かが転がっているのを発見した。
ちょうど、セリーヌがコケた辺りである。
手に取って見ると、透明な容器に、綺麗な淡いピンク色の液体が入っている。
「セリーヌが落としたのはこれかな?」
ちらっと、セリーヌの方を振り返る。
「・・・ま、いっか」
白衣のポケットにそれをしまうと、背中の方から聞こえる喧騒を無視して、当初の目的地であった闘技場へと向かうのだった。