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+レオンの不幸な一日+


〜第三章〜


「行っけーーーーっ!!やっちまえーーーっっ!!!!!」
「きゃーーーー!!頑張ってぇ〜〜〜〜!!」
「ばっかやろうっっ!!何やってやがんだ!!死んじまえ!!」
飛び交う声援。響き渡る怒声。放たれるヤジ。

『コロシアム』

それはかつて、奴隷身分の漢達が命をかけて闘かった場所。
勝利を手にした者には、英雄の称号と市民権が与えられ、晴れて自由の身を手にすることができたと云う。
彼等の一刀、一打は観客を魅了し、また、観客の声は彼等を鼓舞し、修羅の途へといざなう。
魂と魂のぶつかり合いは、観衆の叫びと交ざり合い、うねりとなって会場全体を包み込んで行く・・・。

ここ闘技場は、そんな遥か昔のコロシアムを模して作られたという。
もちろんこの星には奴隷制度などというものはないし、救護体制も整っているため、闘って負けたとしても死ぬようなことは、まず有り得ない。
だが、勇敢な漢達の、熱い闘いへの想いは、時を越えて受け継がれている。
その証拠に、この闘技場に人が絶えたことは、開園以来一度もない・・・。

(なにが漢と漢の熱い勝負だよ、勝てば官軍、Might is right!勝てば良いんだよ勝てば!!)

・・・そんな、熱い、熱い、空気の中、一人冷めた目の少年がいた。

レオンは、闘技場に入ったは良いが、あまり人ごみと喧騒に幻滅し、さっさと会場を後にしようとしていた。
クロード達を探すのはすぐに諦めた。
園内でも最大の建造物。さらに、競技場を円形に取り囲む観客席は超満員。
こんな人込みの中から見つけるのは物理的に不可能である。
それでも、”せっかくだから”と、闘いの様子を見ていたのだが・・・。

(なんだって、こんな野蛮なものに皆夢中になるかなあ・・・)

レオンには理解できない。

闘技場自体は、体を鍛え技を磨くことができるのだから、悪いとは思わない。
だが、参加者を見ていると、剣や斧といった武器の違いこそあれ、皆、はちきれんばかりの筋肉に身を固めた、図体のでかい奴ばかりだ。
そして、一様に突進していく。
何故、どいつもこいつも、あんななのだろう。
中には、ひたすら突進し、豪快な必殺技ばかり使って、後半バテた筋肉バカもいた。
確か36歳で、名前は・・なんて言ったかな?
可哀相に、きっと頭の中まで筋肉で一杯に違いない。
「みんな、もーちょっと頭を使いなよ!」
皆に聞こえるように、わざと大きな声で言ったその言葉は、だが、うおおおおおっ!!という声に掻き消された。
「おい!あの金髪の兄ちゃんすげえぞ!!」
という声があちこちから上がる。
(金髪の兄ちゃん・・?もしかして・・・!!)
思い当たる節があったレオンは、再び人込みの中心を目指して引き返していった。

観客が総立ちとなっている状態では、背の低いレオンは飛び跳ねても見ることができない。
”大きいだけじゃ勝てないんだよ”と、口癖のように言うレオンであるが、ここは嫌でも一番前に行くしかなかった。

人込みにぎゅうぎゅう押され、文句を言われながらも、何とか最前列にたどり着いたレオン。
それまでに、幾度も歓声が上がり、それは最前列に近づくに連れ大きくなっていた。
はぁ、はぁ、と息を切らせながら、顔を上げると、そこにいたのは・・・やはりクロードだった。


敵の斬激を剣で受け止め、はじき返す。
バランスを崩し、わずかな隙ができたのをクロードは見逃さなかった。
すぐに構えを取る。
「空波斬!!」
振り降ろされた剣から繰り出された剣圧は衝撃波となって敵を襲う。
防御する間も無かった敵は、直撃をくらって吹き飛び、そして消えた。
「うおおおおおっっ!!」
と、再び沸き起こる歓声。
(さっすがお兄ちゃん、ムサいおっさん達とは一味違うね!)
レオンは彼が慕う、数少ない人物を、心の中で讃えた。
「クロード選手!!これで破竹の二十九連勝だ!!果たして、どこまで連勝記録を残すのか!!」
アナウンサーが絶叫する。

「続いて、三十戦目!Ready〜〜〜Fight!!!」


ガキィン!ガキィン!ガキィン!!
ぶつかり合う剣と剣。飛び散る火花。
斬る、受ける、薙ぐ、よける、突く、払う、・・・。
クロードは幾度となく連続攻撃を仕掛けたが、うまく凌がれてしまっていた。
逆に、今度は敵から連続攻撃を受け、守勢に回っている。
(あぁ、お兄ちゃんが押されている・・・)
レオンは、握り締めた拳に汗が滲んできているのを感じた。

ドカッ!

「うわぁ!!」
鈍い音と、クロードの悲鳴が響いた。
もろに体当たりをくらって後ろに突き飛ばされたのだ。
敵は間髪入れず、クロード目掛けて、剣を投げ付けてきた。
「クロードお兄ちゃん!危ない!!」
レオンは、思わずフェンスから乗り出して叫んでいた。
その声が聞こえたのか、クロードは素早く態勢を立て直すと、地を蹴って空高く跳んだ。
寸での差で、クロードがいた空間を、敵の剣が回転しながら切り裂いて行く。
クロードは空中で、柄を両手で強く握り、剣の切っ先を下に向けると、そのまま敵の頭上目掛けて落下した。
「兜割!」
全体重と渾身の力を込めた一撃は、敵の身体を鎧兜ごと叩き割り、地面にまで貫通した。

「うおおおおおおおおおおっっ!!!!」

会場全体を歓声が揺るがす。
「やったね!お兄ちゃん!!」
レオンは、クロードに向かって精一杯大きな声で叫んだ。
肩で息をしていたクロードだったが、今度ははっきり気付き、こちらを向いた。
「レオン!?いつからそこにいたんだ?」
クロードの顔も自然に緩む。

シュルシュル・・・

「今さっきだよ!お兄ちゃん、凄くかっこ良かったよ!!」

シュルシュルシュル・・・

「そ、そうかな?」
赤面するクロード。何かが空気を切り裂く音に気付かない。

シュルシュルシュルシュル!!

「うん、とっても・・・って、く、クロードお兄ちゃん後ろーーー!!!」
「え?」

ガスッ!!!

嫌な音が響いた。そして、

ドサッ。

という音が続いた。

「・・・・・・・・・・・・・・」
シーン、と静まり返る会場。
数秒間の沈黙の後、アナウンサーがやっとのことで声を搾り出した。
「く、クロード選手ダウン!!起き上がれません!!連勝はここでストップです!!」
「お兄ちゃーーーん!!!」

瑞色の髪の少年の叫び声が響く中、金髪の青年は担架に載せられ、奥へと運ばれていった・・・。