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+レオンの不幸な一日+


〜第四章〜

白い天上、白い床、白いベッド、白い椅子、白いカーテン・・・空間を占めるほとんどのものが真っ白だ。
花瓶に挿された花が唯一、自己を主張している。

その真っ白な部屋に、二人はいた。
金髪の青年はベッドに横たわり、白衣の少年は、椅子に座って心配そうに青年を見つめている。

ここは、闘技場の一角にある、救護センターの一室。
救護センターでは、主に闘技場でケガを負った人達が運ばれ、紋章術を利用した様々な治療が受けられるようになっている。
どんなに深手を負っていても、キズは理論的に100%完治できるので、参加者達は思う存分力を使えるというわけだ。
だが、体力の消耗はすぐに回復させることはできないので、それまで安静にするための部屋が、幾つか用意されている。
端的に言えば、病室である。

「う・・ん・・・」
青年が僅かに身体をよじった。
「あ、クロードお兄ちゃん!目覚めた?大丈夫?」
「レオン・・?ここは・・・?」
ゆっくり身体を起こし、尋ねるクロード。
「ここは、救護室だよ、お兄ちゃん」
レオンは、説明を始めた。

先の闘いで、クロードは敵を倒したこと。
しかし敵の剣が回転して戻ってきたところを喰らってしまったこと。
そして、気絶して救護センターに運ばれたこと・・・。
それらを一通り話し終えると、レオンは、不意に申し訳なさそうな顔をした。
「ごめんね、ボクが声をかけたばっかりに・・・」
しゅん、と顔を伏せる。
それを見たクロードは、優し気な笑みを浮かべ、レオンの頭に手をやった。
「いや、レオンは悪くないよ。僕の詰めが甘かっただけさ。心配かけたな」
くしゃくしゃっと頭を撫でる。
レオンは思わず目をつむった。クロードの手が耳に触れてくすぐったい。
「でも、ほんとに大丈夫?」
しばらくされるがままにしていたレオンは、上目遣いにクロードを見た。
「う〜ん、まだ疲労が残っている感じだけど・・大丈夫だよ。すぐに回復するさ」
「なら良いんだけど・・・」
「だいじょうぶ、だいじょーぶ」
笑って手の平を、ひらひらと振るクロード。
「それより、レオンはどうして闘技場なんかにいたんだい?まさか参加するつもりだったわけじゃないだろ?」
「クロードとディアスの様子を見にきたんだよ。特に行きたい所もなかったから・・・」
レオンは少し沈みがちに答えた。
「そうだったのか。でも、せっかくなんだから、こんな所じゃなくて、もっと楽しい所に遊びに行けば良いのに」
クロードは、自分の事は棚に上げて言った。
「そうだ、セリーヌやプリシス達の所に行ったら面白いんじゃないか?二人とも、かなり楽しそうだったよ?」
クロードが何気なく言ったその言葉に、レオンは苦い顔になった。
「・・・行ったよ」
「え?」
レオンは、仕方なくプリシスとのやりとりを説明した。

すると・・・

「あははははっっ!」
クロードは大声で笑い出した。
「笑い事じゃないよ!お兄ちゃん!!」
レオンは、顔を赤くして抗議する。
「いや、それは災難だったな、レオン・・あはははっ・・」
「むうっ・・ひどいや!お兄ちゃんまで!」
膨れっ面をするレオン。
「あはは・・いや、ごめんごめん、悪かった悪かった」
クロードは謝ったが、笑い過ぎで涙を浮かべている状態では、説得力は無かった。
「そうかそうか・・・、それで?そのまま闘技場に来たのかい?」
クロードが話を反らしたのをわかったが、レオンは、ここは堪えることにした。
「・・・うん、そのつもりだったんだけどね、途中でセリーヌを見掛けてさあ・・」
今度は、セリーヌとのやりとり(?)を説明する。

「へえ〜一体何があったんだろうねえ」
セリーヌを見捨てた事については、クロードは何も言わなかった。
たぶん、セリーヌにはリーダーたる、クロードが一番苦労しているのだろう。
「それでね、途中でこんな物を拾ったんだけど・・・」
レオンは白衣のポケットから、淡いピンク色の液体が入った、小さな容器を取り出した。
「それは?」
「たぶん、セリーヌが落とした物だと思うんだけど・・・」
「へえ〜どれどれ」
クロードは、レオンから容器を受取り、眺めてみる。
「なんか、きれいだね」
「うん。見た感じ、何かの薬っぽいから、セリーヌが調合して作ったのかなあ?」
セリーヌはああ見えて、職業柄、野草などの知識が豊富で、調合が得意だった。
「う〜ん、どうなんだろ・・う・・」
クロードは、容器の栓を空けて匂いを嗅いでいたが、しばらくしてベッドに付属している机に置いた。
「もしかして、セリーヌが追いかけられていたのって、それが原因だったりしてね?」
「・・・・・・・・・」
「お兄ちゃん?」
レオンは、冗談のつもりで言ったのだが、返答が無い。
「どうしたの?クロードお兄ちゃん?」
クロードはレオンを、じっと見つめていた。その頬は、少しほてっているようにも見える。
「・・・・・だ」
「え、なに?」
「・・・キレイだよ、レオン・・・」
「・・・・・・え?」
きょとんとするレオン。
だが、クロードはレオンの白い手を取ると、いきなり指先を舐めた。
「ひゃう!!」
ぞぞぞぞっという感覚が背筋に走る。
「お、お兄ちゃん!?何するのさ!?」
慌てて手を引っ込めるレオン。
まだ、すーっとしている。
「なにって・・舐めただけだよ」
ぺろりと舌を出して、にやっと笑みを浮かべるクロード。
レオンは、鳥肌が立つのを感じた。
「お、お兄ちゃん変だよ!どうしちゃったのさ!・・・ま、まさか!?」
セリーヌが追い掛けられていた理由、淡いピンク色の薬、そして今のクロードの様子・・・。
バラバラだった点が、今、一本の線に繋がった。

『媚薬』

(前に本で読んだことがある・・・確か、その香りを吸った者は、目の前の人を好きになるとか・・・。 その時は、下らないと思って存在自体忘れていたけど、まさか今、よりによってこんな形で体験することになるなんて!)

「お兄ちゃん!お兄ちゃんが変なのは、その薬のせいだよ!それは媚薬なんだ!」
「媚薬?・・なにを言っているんだい?レオン。僕は、前から君のことが・・」
「ちょ、ちょっと待って!クロードお兄ちゃんには、レナお姉ちゃんがいるじゃないか!!」
クロードとレナは互いに惹かれ合っている。レオンにもその位はわかる。
レナの名前を出せば、クロードも少しは自分を取り戻すはず!・・・と思ったのだが。
「レナ?・・・そうか、妬いてるんだね」
「は?」
「ごめんな」
「へ?」
「でも大丈夫」
「なにが?」
「これからはレオン一筋だから・・・」
熱い瞳で見つめるクロード。
「ちがーう!そういうことを言いたいんじゃないんだってば!」
レオンは頭を抱えてしまった。
「だいたい、ボクもお兄ちゃんも男でしょ!」
「それがどうしたんだい?」
「どうしたんだい?って・・・」
「男だとか女だとか、そんなことは大したことじゃないんだ・・・愛があれば・・・」
(・・・ダメだ、完全に逝っちゃってる・・・)
レオンは、説得することを諦めた。
「あ、えっと、クロードはもう大丈夫みたいだから、ボクはそろそろ行くねっ」
精一杯の笑顔を作って椅子から立つレオン。
そのまま足早に立ち去ろうとして・・案の定、クロードに腕を掴まれた。
「何を言ってるんだい?・・・これから楽しい時間が始まるんじゃないか・・・」
クロードの不気味な笑みを見て、レオンは、これから起こることに危惧を抱かずにはいられなかった・・・。