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+SO2小説(クロード編)+


広大な外宇宙は100億もの人間の様々な夢を受け留め、その上で、さらに無限の可能性を見せ付けていた。
そこには数え切れないほどの夢が広がっている。
・・・無論、その中には悪夢も存在する。
宇宙暦342年、惑星レゾニアとの対戦を戦艦カルナスによって勝利に導き、栄誉指揮賞を受賞。
宇宙暦344年、辺境の未開惑星ロークに発生した謎のウイルス事件を解決し、レゾニアを背後から操っていた惑星ファーゲットの指導者、ジエ・リヴォースの陰謀を阻止。
その功績をたたえられ、38歳という異例の若さで提督に昇格する。
僕は、そんな父さんのことを誰よりも尊敬している。
地球連邦の仕官が立派な職業だってこともわかっている。
でも、僕は僕だ!地球連邦軍の英雄ロニキス・J・ケニー提督の息子というだけの人形じゃない!

だけど・・・

だけど僕は今ここにいる・・・


「・・・ロード・・・クロード!」
名前を呼ばれ、ハッと顔を上げる。
「どうしたクロード?具合でも悪いのか?」
そこには父ロニキスの顔があった。
慌てて取り繕う。
「あ、いえ、何でもありません・・・提督」
『提督』と呼ばれてロニキスはやや複雑な表情をしたように見えた。
「そうか、なら良いが・・・。」

絶え間無く吹き荒ぶ風。
時折、雷光と共に轟音が辺りに響き渡った。
上空には、黒雲がどこまでも立ち込め渦を巻いている。
そのため、光はまともに届かず薄暗い。

クロード・C・ケニーは、地球連邦軍の仕官として惑星ミロキニアの探査隊に加わっていた。
ロニキス・J・ケニー提督の副官としてだった。若干19歳にして、である。
しかし、それは誰の目にも地球連邦軍の英雄、父、ロニキスの子びいきに写った。
「またクロードだよ・・・」
「さすが、ロニキス提督の御曹司は違うね・・・」
誰も口には出さないが、心の中ではそう思っていた者が少なく無かった。
生まれた頃から”ロニキス提督の息子”という肩書きを背負ってきたクロードには、今回のことでも、そう囁かれることがわかっていた。
だから、クロードは、今回の調査隊に自分が加わることには反対した。
しかし、それは父ロニキスの一言によって一蹴された。
「これは命令だ。クロード」
元から半分諦めていたクロードはそれ以上何も言わず。
「はい、わかりました。提督」
と答えたのだった。

「そうだ」と何かを思い出したように、ロニキスは懐から銃らしきものを取り出した。
それは、一人前の軍人となった者に標準装備として渡されるフェイズガンだった。
「クロード、お前もすでに少尉だ。もし戦闘になったら、これで皆を守ってやれ。」
クロードは、無言でそれを受け取った。
「どうした、緊張しているのか?」
クロードの気持ちを知ってか知らずか、ロニキスが聞いた。
「いえ、そういうわけでは・・・。」
「はは。クロード、これしきの事でおびえているのか?少尉ともあろうものがそんなことでどうする。」
クロードは、”やっぱりわかってない”と思った。
「いえ・・・僕は・・・」
と、そこに「提督!」と科学仕官の声がかかった。
「わかった、今行く」とロニキスは答えると、
「いいか、もし戦闘になった時はためらず使うのだぞ。」
そう言い残して、ロニキスはまた調査に戻って行ってしまった。
クロードは、ふぅっ、と溜息をすると、
調査メンバーのいる方に、ゆっくりと歩いて行った。

そこには、調査隊のメンバーが全員集まっていた。
彼らが見上げているものを、クロードも見上げる。
すると、周りを岩石で囲まれた、その場所には全く似つかわしくないものが目に入って来た。
明らかに人工的に作られたと思われる巨大なドーム。
皆が立ち止まっていたのは、その入り口のやはり巨大なゲートだった。
「だれが何のためにこんな物を・・・。一体何があるというのだ?」
今まで、数々の惑星を巡ってきたロニキスでさえ驚きを隠せずにそう言った。
「とりあえず、このドーム入り口を調べてみましょう。」
と士官が言った。
「そうだな。全員で周辺の調査を行うことにするか。」
ロニキスのその声を波きりに、調査隊が皆散って行く。
クロードも、適当に歩き回ってみることにした。
「身の安全が最重要事項だ。気をつけて作業にとりかかれ」
ロニキスの声が少し離れたところで指示を与えている。
クロードは、意識的にロニキスから離れたところを探査していた。
と。

チカチカ・・・

クロードは、一瞬何かが光ったのを感じた。
今度は注意して見ていると・・・

チカチカ・・・

「やっぱり何か光っている・・・」
クロードは、光が見えた方に近づいていった。
すると、そこには一箇所だけ不自然に突き出た岩があり、光はそこから時折漏れていた。
よく見ると、それは人工的に造られた、何かの装置だった。
「父さ・・・提督!」
自分が見つけたことに、自分で驚いていたため、つい、”父さん”と呼びそうになってしまった。
クロードは、地球連邦という組織の中では、ロニキスを必ず『提督』と呼んでいる。
自分の中で、けじめをつけるためである。
そこには、あるいは父への葛藤が含まれているかも知れない。
「どうした、クロード!」
という声と共に、ロニキスと、そして数人の士官が駆け寄って来た。
「何だ、こんな所に・・・」
「多分、制御装置の一種だと思われます。このドームの入り口を開くパネルになっている可能性があるかも知れません。」
クロードは、先の轍を踏むまいと、努めて『一人の士官』として答えた。
だが、それに対するロニキスの返事は

「うむ、さすがだな、クロード」

クロードは、泣きたくなった。
それは、『我が子』に対するひいきと取られても仕方の無い賞賛だった。
他の士官達の、何か言いたげな視線が二人に集中する。
だが、ロニキスはそんなことには全く気付かないかのように、話を続けた。
「どうだ、このパネルの解析は可能か?」
「少し時間をいただければ何とか・・・」
科学士官はチラリとクロード見たが、何も言わずパネルに向かって作業を開始した。

数分後・・・
『ピ・・・ピピピ・・・ピピピピッ』

サァーッと、巨大なゲートは、一瞬で開いた。
「・・・よし、開きました。」
そして、開いた入り口の付近も慎重に調べる。
「内部の様子はどうだ?」
ロニキスが尋ねる。
「入り口にセンサーらしきものはなさそうですね。後は内部に入るしかなさそうです。」
科学士官は、一先ずは入っても大丈夫だと判断した。
「よし、内部の探索を開始する。何が起こるか分からないから、各自注意を怠るな。」
そう言うと、ロニキスは、自ら先頭に立ってドームの中に入って行った。
その後に、士官達が続いて入って行く。
クロードは、ロニキスの背中を眺めながら一番最後に入った。


ドームの中は、照明装置が働いており、程好い光が内部を照らしていた。
辺りを見回すと、砂や岩に埋もれて、何かの装置や建造物などの残骸とおぼしき物が所々に転がっている。
どれも原形を留めておらず、動きそうな気配は無い。
外では相変わらず激しい風が音を立てて吹いているが、ドームの中まではさすがに入っては来ないようだ。
だが、そのためか、ドームの中は空気の流れがよどみ、やや息苦しい感じがする。

調査メンバーは、既に散ってそれぞれ作業を開始していた。
ロニキスは遠くで科学士官と何やら話をしている。
クロードは、また適当に歩き回ることにした。
(どうせ自分にできることは何も無いもんな…)
特に意識せずに、ぼぉーっと歩き回っていると、自然といろいろな光景が目に入り、人の会話も聞こえて来る。
「何故こんなに大きなドームを…」
「一体ここで何があったんだ?内部からもの凄い力で爆発したような感じだが…」
「これだけ人工的に、しかも精巧に作られた物があるのに…どうして人はいないのでしょうか?」
「何かの事故だろうか…しかし、何故このドームの中だけ…」
「す、凄い凄い…」
中には、士官候補生もいるようだ。
生き生きした目で、探索に熱中している。

(それに比べ…)

自分でもわかる。おそらく、自分は死んだ目をしていることだろう。
(しかし、それにしても…)
確かに、内部から激しい爆発があったと思われる光景だ。
ドームの中にのみ、様々な装置やら建造物があるということは、ここで何かの実験をしていたのだろうか?
そして、実験の失敗で…?

知らず知らずのうちに考え込んでしまっていたらしい。
ふと気が付くと、いつのまにか、入り口から相当遠く、ロニキスと科学士官が探索している辺りまで来てしまっていた。
二人のさらに向こうには、見たことも無い装置がある。
唯一と言っても良い、原型を留めているものだった。
どうやら、その装置を解析しているようだ。
「あの装置は一体どういう働きをしているのか?」
「まだ何もわかりません。だれが何のためにこんな物を…」
二人とも、装置の解析に集中しているため、クロードには気付いていないようだ。
(ここまで来ちゃったからな…)
クロードは、迷ったが、一応、声をかけることにした。
「提督。この装置は…」
クロードの存在に気付き、ロニキスが振り向く。だが、返ってきたセリフは、
「どうしたクロード?今は目の前装置について、解析中だ。お前は他の所を頼む」
完全に、クロードの存在を否定したものだった。
少なくとも、クロードにはそう感じられた。
それきり、ロニキスは振り向こうとすらしない。
(なんだよ…さっきは、べた誉めしたくせに…)
「……」
しばらく立ち止まっていたクロードは、無言で歩き始めた。未解析の装置に向かって。
それに気付いた科学士官が、慌てて注意する。
「少尉、あまり近寄らないでください。まだ、あの装置の正体がわかっていないんです」
その声でクロードの行動に気付いたロニキスも、警告の声を発する。
「いい気になって近寄るな、クロード、あの装置の正体を確認してからだ」
しかし、それを聞いたクロードは。
「大丈夫です。心配はいりませんよ」
立ち止まるどころか更に歩く速度を上げていく。
もう、装置との距離はほとんど無くなって来ていた。
「まだ、あの装置が何なのか分かっていません。むやみに近寄らないでください」
「クロード、戻って来い!その装置にむやみに近づくな!」
注意は、もはや叫びと化していた。

あと、三歩…二歩…

「クロード!!」

(そんなに怖がっていたら何も出来ないじゃないか!)
心の中でそう言い返す。

一歩…クロードは、装置の前に到着した。
装置を簡単に眺める。何も起きない。

(どうだい、僕だって勇気があるんだ)

「やっぱり、危険なものは、何もなさそうですけどー」
この時、クロードは、自分の取った行動で、自分は勇気あることを示したと思った。
しかしそれは、子供が大人に禁じられた事をして、それを誇らしげに自慢している時に感じているとものと変わらないものだった。
大人が、何故それを禁じているかを考えないで。
と。

“ピ…ピピ…座…標……214…3−68……97−78…1…ゲート…開……きま…す”

「!?」
突然、背後から無機質な声が聞こえてきた。
装置が作動したことに気が付いた時には、クロードの身体は宙に浮いていた。
さらに、装置へと引き込まれて行く。
「うっ、うわああぁぁぁ〜〜〜〜っっ!!」
突然の事態に動転し手足をバタつかせるが、空を切るだけでどうにもならない。
そのうちに、クロードの周りの空間に奇妙な穴が出来て来た。
「クロード!!」
その状況を見て、ロニキス達が慌てて駆け寄ってくる。
しかし、穴はどんどん大きくなって、クロードを覆って行く…刹那。
キィシィーン!という音とともに、まばゆい光が辺り一面に広がった。
すぐ近くまで駆け寄って来ていたロニキス達は思わず目を瞑る。
そして、光がおさまり、目を開けた時…クロードは消えていた。装置ごと。
地面に半径10mほどのクレーターを残して。
「きっ、きえ…た」
科学士官が、信じられないといった表情で喘ぐ。
「クロードーーーー!!!」
心乱れたロニキスは、その巨大なクレータに飛び込もうとする。
もちろん、落ちたら無事では済まされない。
「提督!!」
科学士官が体を張って止めた。
ガクっと、その場に崩れ落ちるロニキス。
「私の…、私のせいだ…」

風が、一際強く吹き抜けていった。